生成AIは「便利な道具」から「一緒に仕事を進める相棒」へ

Ascent Business Consulting株式会社(以下、ABC)では、AIを単なる情報収集や文章作成のためのツールとしてではなく、業務課題を発見し、解決策を形にするための実践的なパートナーとして活用しています。

今回話を聞いたのは、DX領域でAIコンサルティングに関わる若手メンバー。入社前はシステム開発の経験がなく、AIエージェントという言葉にも馴染みがなかったといいます。そんなメンバーが、AIエージェントを活用し、新卒研修の日報運用を支援する業務改善ツールの開発に取り組みました。

日々の小さな不便を起点に、AIと対話しながら要件を整理し、画面を作り、分析ロジックを検討する。そこには、ABCが大切にしている「現場の課題を実務に落とし込むAI活用」の姿があります。

「自分には関係ない」と思っていたシステム開発に、AIで踏み出せた

──── まず、入社前のAIやシステム開発に対する印象を教えてください。

AIという言葉は学生時代から耳にしていて、使えた方が便利だろうな、という感覚はありました。

ただ、システム開発についてはまったく知識も経験もなく、自分にはあまり関係のないものだと思っていました。AIエージェントという存在も、入社前は知りませんでした。

──── そこから実際に業務改善ツールを作るところまで進んだのは大きな変化ですね。

そうですね。最初は本当に何もわからない状態でした。ただ、AIエージェントに相談しながら進めることで、「こういうことから決めていきましょう」と道筋を示してもらえました。単に質問に答えてくれるだけではなく、自律的に次の論点を出してくれる感覚がありました。

課題の出発点は、新卒研修の日報を「もっと振り返りやすくしたい」という思い

今回取り組んだのは、新卒研修における日報運用を支援するシステムです。

従来、新卒研修の日報はGoogleフォームで提出し、その回答コピーがメールで届く運用でした。もちろん記録は残りますが、メールボックスには他の連絡も混在します。過去の日報を見返したい時に探しづらく、内容もメールを開くまで把握しにくいという課題がありました。

──── なぜ日報運用を支援するツールを作成しようと思ったのですか?

受講者目線で、自分が過去に何につまずいていたのか、どんな振り返りをしていたのかを見返しづらいと感じていました。そこで、過去の日報をキーワードで検索できたり、自分のつまずき傾向や強みを確認できたりする仕組みを作りたいと思いました。

このツールでは、受講者が日報を提出できるだけでなく、講師・運営側も提出状況や要フォロー者を確認できます。さらにAIが日報内容を分析し、心理コンディション、学習の進捗、フォローの緊急度などをもとに、次に取るべきアクションの示唆を出す設計になっています。

AIが見るのは「点」ではなく「流れ」。人の判断を支える仕組みにする

特徴的なのは、AIが単純に一日の内容だけで判断しないようにしている点です。

たとえば、日報に一度ネガティブな表現が出たからといって、すぐに緊急対応と判定するわけではありません。過去数日間の傾向や、本人の普段の状態も踏まえて判断するようにしています。優秀な受講者が高い水準を維持している場合には、変化が少なくても要フォロー対象から外すなど、過剰判定を防ぐルールも設けています。

──── 要フォロー者の判断は具体的にどのようにしているのでしょうか。

AIには、不明点やつまずきの表現があるか、原因分析ができているか、質問が具体的か、翌日の改善行動が書かれているかなどを見てもらうようにしています。ただし、AIの判断をそのまま絶対視するのではなく、最後は講師や運営が確認して対応する形にしています。

ここに、ABCらしいAI活用の考え方があります。AIは人の仕事を置き換えるものではなく、人がより早く、より的確に判断するための補助線です。見落としを減らし、必要なフォローに早く気づけるようにする。そのうえで、最終的な対応は人が責任を持って行う設計になっています。

受講者には「評価」ではなく「成長のヒント」を届ける

ツール開発では、人事担当者からの助言も反映されています。

当初は、AIが出した数値スコアを受講者にも表示する案がありました。しかし、数値が見えると、受講者が「良く見せよう」として本音を書きづらくなる可能性があります。そこで、細かい数値は講師・運営側の確認用にとどめ、受講者にはレベルやコメントとして伝える設計にしました。

──── 受講者側に、日報を見返しやすくなる以外にもメリットはあるのでしょうか。

受講者側には、つまずきだけでなく、本人の強みやポジティブな変化も表示するようにしています。

「ここができていない」だけではなく、「あなたの強みはここです」と伝えることで、モチベーションや今後の成長につなげられるようにしたいと思いました。

AI分析というと、どうしても評価や監視の印象を持たれがちです。しかし、この取り組みでは、受講者が安心して振り返りを書けること、そして成長のヒントを受け取れることを重視しています。技術だけでなく、人の心理や運用現場まで考慮することが、実務で使えるAI活用には欠かせません。

セキュリティも、AIと対話しながら学び実装する

研修日報には、個人の学習状況や心理状態に関わる情報が含まれます。そのため、セキュリティや情報管理の観点も重要です。

今回のツールでは、教材などの資料そのものをAIに直接渡すのではなく、必要に応じて登録済みのリンクを推薦する形にしています。また、社内ルールやデータベース設計の方針に沿いながら、不明点はAIエージェントに確認し、リスクを洗い出しながら進めました。

──── セキュリティについては難しい部分かつ、かなり重要な点だと思うのですが、どのように設計したのでしょうか。

自分に専門知識がない部分でも、AIエージェントに「今の設計にはどういうリスクがあるか」と聞くと、確認すべき観点を教えてくれます。もちろん社内のルールや先輩方のアドバイスが前提ですが、わからないことをそのままにせず、AIにも相談しながら進められるのは大きかったです。

ABCでは、AIを使うこと自体を目的にするのではなく、安全に、実務で使える形に落とし込むことを重視しています。便利さとリスクの両方を見ながら、現場で使える仕組みにしていく姿勢が、AI導入支援にも活きています。

難しかったのは、コードを書くことより「何を作りたいか」を言語化すること

システム開発未経験のメンバーにとって、最初に大きな壁になったのは専門用語でした。たとえば、Google Cloudの設定や認証まわりの説明を見ても、最初は何を意味しているのかわからなかったといいます。

それでも、AIエージェントに「もっとわかりやすく説明して」と依頼しながら、一つずつ理解を進めました。

──── このツールを作る過程で特に難しいと感じたポイントを教えてください。

AIエージェントも万能ではありません。目的や最終的にどうしたいのかをきちんと伝えないと、「そうじゃない」という機能ができてしまうこともあります。最初はプロンプトの作り方が難しかったです。雑な指示を出すと雑なものしか返ってこない、と教えていただいてから、目的や画面イメージを具体的に伝えるようにしました。

──── AI活用において重要なのは「AIに任せる力」だけではなく、「自分が何を実現したいのかを定義する力」なんですね。

AIが「こういうことから決めていきましょう」と提案してくれた時に、丸投げするのではなく、自分で要件を精査する必要があります。この機能は必要なのか、ここはどういう設計にしたいのかを、一つひとつ見て返すことが大事だと感じました。

AI活用で、若手の挑戦範囲は広がる

今回の取り組みを通じて、AIに対する印象も変わったといいます。

以前は、ChatGPTやGeminiに文章をまとめてもらう、わからないことを聞くといった使い方が中心でした。しかしAIエージェントを使うことで、コードを書き、設計を提案し、次の作業を進めてくれる存在としてAIを捉えるようになりました。

──── 今回の取り組みを通じてAI活用に対する印象は変わりましたか? 

システム開発は自分には縁がないと思っていました。でも、AIを使うことで、こんなに短い期間で一つのシステムの形を作れるのだと実感しました。画面自体は一日でも作れますし、要件定義やテーマ設定から考えても、最初の形は一週間ほどで見えてくると思います。

もちろん、AIに依存しすぎる危うさも感じています。AIが使えない場面や、機密情報の観点で利用を制限すべき場面もあります。そのため、AIに丸投げするのではなく、自分で考え、判断し、必要な部分にAIを活用する姿勢が重要だと感じています。

ABCが目指すのは、お客様に「期待以上の速さと品質」を届けるAI活用

ABCでは、若手メンバーも入社直後からAIに触れ、業務課題を見つけ、自ら改善ツールを作る経験を積んでいます。これは、単に社内業務を効率化するためだけではありません。

AIを使って調査や整理のスピードを上げる。人が考えるべき論点に早く到達する。お客様に対して、期待以上の速さと品質でアウトプットを届ける。そのための実践知を、社内で日々蓄積しています。

──── AIを活用しつつ、今後ABCでどのようなことに挑戦したいですか?

AIの出力をそのままお客様に出すのは良くありませんし、使い方には注意が必要です。ただ、AIをうまく活用できれば、調査や整理のスピードは圧倒的に上がります。社内でAIを使うだけでなく、AIを活用してお客様に期待以上の速さと品質を届けられるようになりたいです。

AI時代に必要なのは、技術を知っていることだけではありません。現場の課題を捉え、AIに任せる部分と人が判断する部分を切り分け、実務に耐える形へ落とし込む力です。

ABCは、コンサルティングと事業会社双方の視点を活かし、AIを「語る」だけでなく「使い、作り、改善する」組織として、これからも実践を重ねていきます。

AIは難しそうだと感じる人へ

──── 最後に、AIやAIエージェントにまだ距離を感じている人へ、メッセージをおねがいします。

AIエージェントと聞くと、最初は少し身構えてしまうかもしれません。でも、意外と何でも答えてくれます。わからないことがあっても、「これはどういう意味ですか」と聞けば教えてくれます。最初から専門知識がなくても、気軽に取り組めると思います。

AIは、特別な人だけが使うものではありません。現場の不便に気づいた人が、AIと対話しながら改善の一歩を踏み出せる時代になっています。

ABCでは、そうした一人ひとりの挑戦を、組織の力に変えていきます。AIを活用して業務を変えたい企業の方、そしてAI時代のコンサルティングに挑戦したい方にとって、ABCは実践の場であり続けます。

さいごに

少し前まで、AIは「壁打ち相手」としてアイデアを整理したり、分からないことを聞いたりするための道具でした。しかし今回の取材を通じて、AIはすでにその役割を超え、一緒に業務改善を進めてくれる「仕事のできる同僚」や「頼れる先輩」のような存在になりつつあるのだと、改めて感じました。

ABCでは、今回お話を伺った方だけでなく、AIコンサルティング事業に携わるすべてのメンバーが、日々AIを活用した業務改善に取り組んでいます。
現場の小さな不便に気づき、AIと対話しながら形にしていく――そうした一人ひとりの実践が積み重なって、ABCらしいAI活用のかたちがつくられているのだと感じた取材でした。

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